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Challenge the potential of drones

Zenmuse H20Tの赤外線カメラを活用した生物捜索の実力をレビュー。

筆者:AERIAL DESIGN 岡村 弦樹



Zenmuse H20Tは、Matrice 300 RTKに搭載可能なジンバルカメラで、
名前にある「T」(Thermal)の通り、赤外線カメラが内蔵されています。
このカメラは、可視光と赤外線を組み合わせたハイブリッド撮影が可能で、非常に多機能な機器です。

Zenmuse H20Tを搭載して撮影を行うと、
広角可視光、望遠可視光、赤外線カメラ、FPVカメラの4つの撮影データが同時に収録されるため、
視覚的にも非常に多彩なアプローチが可能です。

ドローンにおける赤外線カメラの主な使用用途としては、
ソーラーパネルや架線の点検、表面温度の測定、夜間の捜索活動などが挙げられます。
今回はその中でも、夜間に生物を捜索・発見する際の実用性について、
どれほど有効であるかをレビューしていきたいと思います。

◆DJI Zenmuse H20T ホームページより引用
概要:https://enterprise.dji.com/jp/zenmuse-h20-series
スペック:https://enterprise.dji.com/jp/zenmuse-h20-series/specs

写真右手のカメラがZenmuse H20T。

まずは、以下の動画をご覧ください。

上記の動画では、海上から沿岸にいる軽装の人物を被写体として撮影しています。
撮影環境は、外灯がほとんどない僻地の深夜で、11月の沖縄、気温は約22度です。

月明かり程度の光源しかない環境でも、
地形や物体の形状をはっきりと判別できることがわかります。

水面や草木の温度は低く、舗装された道路やコンクリート部分の温度はそれより高く、
さらに人間の表面温度は最も高いことがわかります。

陸上には田園が広がり、格子状の柵や金属製の支柱、車両や船舶の形状、
テトラポッドの凹凸なども判別可能です。

前提として、障害物があると認識できないので、
密度の高い森林内で潜んでいるような生物を探すのは困難です。

また、添付された動画は収録済みの映像を確認しているものですが、
リアルタイムで捜索を行う場合、電波の伝送品質によって映像の品質が低下し、
多少見えづらくなることがあります。

それを考慮したうえでも、実運用の経験とリアルタイム伝送映像の結果から、
見通しの良い環境では生物の捜索に十分活用できると判断しました。


赤外線カメラの解像度は640×512。
デジタルズームは1~4倍まで対応しています。

デジタルズームは解像度は変わらないですが、
多少補正が入って被写体が確認しやすくなりました。
違和感を感じた際にズームを使ったり、
飛行高度を下げられない環境でズームを活用したりする運用が適切と考えられます。

被写体との距離が離れすぎると細かいディテールを判別しづらくなり、
逆に距離が近すぎると捜索範囲が縮小されてしまうため、
1~2m程度の生物を捜索・発見するのに適した距離について考えました。

※被写体との距離は、構造物の長さをGoogleマップで計測し、
カメラに写る範囲を推定しています。
この推定は、赤外線カメラのDFOV(水平視野角)が40.6°、
アスペクト比が640×512であることを前提に計算したものです。
なお、レンズの歪みは考慮していません。

今回の動画データは、レビューのために撮影されたものではないため、
検証するには前提条件や最適なデータが不足している部分があります。
ただし、H20Tにはレーザー距離計が搭載されており、
リアルタイムでおおよその対象物との距離を測定できます。

距離については実測値ではないため、参考程度にご覧いただければ幸いです。

①機体と被写体の距離が約600mの場合


上記の切り抜き画像は、海から港、陸上を撮影した様子を示しています。
港の突端、手前側には成人が2名直立していますが、
堤防に隠れて下半身は見えません。
この距離では、静止している人間を見つけるのは困難だと言えます。

一方で、地形の形状ははっきりと確認できるため、
夜間の飛行時には安全な運用が可能になると考えられます。

※なお、夜間の目視外飛行は原則として禁止されており、
独自の飛行マニュアルの作成が必要です。

②機体と被写体の距離が約300mの場合


目を凝らすと、わずかに白い点が見える程度です。
立ち位置がコンクリートに囲まれているため、
人間の表面温度との差が小さく、判別が難しくなっています。

人間の立ち位置のやや左上には車が停まっており、
エンジンの熱でボンネットが温められているため、
温度差がはっきりと見て取れます。

温度差が際立つ冬季や、草原や森林を背後にした環境では、
何かがいるかどうかをより判別しやすくなると考えられます。

また、被写体に動きがある場合には違和感を感じやすくなるため、
環境や被写体の条件次第では、この距離でも一定の成果が期待できそうです。

③機体と被写体の距離が約80mの場合


被写体との距離が約80mまで近づくと、
判別がかなり容易になりました。

周囲のコンクリートと温度が似ていますが、
人間らしきものが2人いることが確認できます。

この距離であれば、猫や犬などの小動物も判別できそうです。



カメラの角度や現場の気温、周辺環境の素材など、
条件によって結果は大きく異なると思いますが、
Zenmuse H20Tの赤外線カメラを使用して1~2m程度の生物を捜索する場合、
被写体との距離が100m~200m程度が最適であることがわかりました。

カメラの角度についても、俯瞰で撮影すれば障害物の影響を受けにくくなる反面、
被写体が小さく見えたり、視野が狭くなるデメリットがあります。
そのため、環境に応じてジンバルのチルト角度を適切に調整することが重要です。


たとえば、被写体との距離を200m、ジンバルのチルト角度を45°に設定した場合、
最適な飛行高度は約141mとなります。
これは航空法の規定する飛行高度制限(150m未満)を十分に満たしており、
最大限の捜索範囲を確保しながらも、運用できる条件と言えるでしょう。

8m/sの速さで飛行すると、20分の飛行で4.8km × 148mの範囲を捜索することになるので、
当たりがついていたら何かしらの成果が得られるような気がします。

また、中国の飛行高度規制も150mであることを考慮すると、
このカメラの設計は実務での運用をしっかりと想定したものと言えます。
ユーザーの期待を裏切らないDJIの技術力に感心させられます。

サーチライトとの組み合わせで、生物を発見したら光を当てて、
可視光で撮影、地上部隊に場所を知らせる、
といった合わせ技も可能だと思いました。

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